(紛失中)
(紛失中)
初めて彼女と喋ったのは,学校だった.別に,それは初めて見た時ではない.彼女はとても白い髪を持っていて,とても白い肌をしていて,とても白いローブを纏っていたから,街中でも良く目立った.でも実際,彼と彼女の関係はといったらそこまでで,別に自分は何か外見的に目立つ特徴があるわけでもないから,彼女が彼のことを知っているだなんてことは多分ないだろう.もちろん彼女が彼を見かけたりしていないとはいえないが,見かけていたとしてもそれはせいぜい通行人の一人という認識でしかないだろう.要するに,関係,だなんて呼ぶことすらおこがましいような,そんなものである.彼女はただ白い存在で,特別な感情があったわけでもなく,そこまでだった.
彼はずば抜けた実力生で,だが優等生ではなかった.要するに授業はあまり出ていなかったが,成績は良かったし,やるべきことはすべてやってのけた.生徒たちにとっては羨望の的でしかなく,仲間は少なかった.彼は一人で何もかも出来てしまう実力があったし,実際集団で何かやるということをしなかった.授業でパートナーと二人がかりで使うべき魔法を,パートナーを無視して両手でいとも簡単に扱ってしまった時は教師だってそりゃたまげたものだ.だが困ったのは当然パートナーのほうで,そんな彼の協調性のなさが,友という存在を作らせなかったともいえる.いじめだって一時あったが,今やもう返り討ちを恐れて彼に手を出すものなど居なくなった.教師が束になってかからなければ止められないほど,彼は強かったのである.
「いや,学外の者を入れるわけには……」
ふとそんな声が耳に届く.かなり近い.近いって,そりゃすぐ隣だ.杖を伸ばせば発話者を叩けないなんて事はない.通り過ぎようとした図書館の入り口で,誰かが足止めを食らっているらしい.
「そう……少し調べものがあるだけなのだけど」
女の声.白い人.一目見たらすぐにわかる.まるで色を持つことを忘れてしまったかのような少女.彼は,ふと足を止めて,言った.
「チャーリ,入れてあげたら?」
「あ,アラン.またそんなことを言って……」
「何が不満なのさ.ちゃんと一級魔法使いの杖を携えている人を入れないなんて,魔法学校として恥じゃんか」
「それは,そうですが,その……私にはそういう権限は……いや,学内の者である証明があれば」
アランは今度,白い少女の方を向いて聞いた.
「君,ここの学校の娘? 単に証明石なくしちゃっただけ?」
すると,少女は首を振った.
「いいえ.残念ながらここに通ってるわけではないの.だけど,家の本ではどうしても足りなくなって,それで,ここならと思って.でも無理なら仕方ないわ.他をあたるから……」
「チャーリ,僕が付き添うよ.さ,どうぞ,お嬢さん」
アランは,少女が言葉を言い切る前に,それをさえぎって勝手なことを言った.少女は少し驚いたような顔をして口をつぐみ,チャーリは慌てた.
「アラン! またそんなことを言って.次の授業は無いのですか?」
「なに言ってんだ.来年から魔方陣の教師になる僕に,今更『応用魔方陣の描き方』なんて馬鹿馬鹿しいことやってられるわけ無いだろ!」
アランはそんなことを言って,少女のローブの袖を掴むと図書館の中へ引き入れた.
「え? え?」
突然引っ張られて驚き,少しばかりよろめく少女.転ばないようにするためにはアランに続いて図書館に入るしかなく,彼女はそれを選択した.
「あ,ちょっと! アラン! そういう問題では……」
「大丈夫! この娘が図書館内に居る間の責任は僕が取るから!」
いささか広めの図書館のロビーを突っ切って,彼らは階段を駆け上がった.
一般に生徒に公開されているのは一階から六階までで,それぞれ階級分けがしてある.一階はまだ魔法使いでない見習いも閲覧可能で,二階は五級以上の魔法使いが閲覧でき,三階なら四級魔法使い以上が閲覧できる.そんな具合で続いて,六階は一級魔法使いのみが閲覧できるようになっている.実際には単純な話で,階段には巧妙な仕掛けがなされていてその実力が無ければ階段なぞ上れないようになっているだけだったりする.
この図書館,どうやら地下も存在するらしいが,そもそも生徒は利用できない.禁書が収められているとか色々噂はされているが,結局入り口すら見つからないので,生徒の中で真実を知る者は居なかった.ただ,例えばアランのような生徒が本気で探せば見つかるのかもしれなかったが,アランはどうやらそういったことには興味が無いようだった.
チャーリは結局追いかけてこなかった.というか,彼は見張り番なので,追いかけている間にまた別の招かざる客を入れてしまえば事態は悪化する.そしてなによりも,結局アランはこういうことにかけては信用できてしまう人なのである.責任を取ると言ったら,あっさりと取ってしまうだろう.止めても止めなくても自分にとって大差ないなら,止めないほうが楽だ.少なくとも,止める努力だけはした.
「……どうして?」
さすがに戸惑いつつ,少女が口を開いた.とりあえずのところ,さすがに一級魔法使いの杖を持っているだけあって,二階に上がるための仕掛けは難なく超えてきたらしい.
「あ,そだ.袖,大丈夫? 伸びちゃった?」
全然関係ない事を言うアラン.どうせ彼の行動に深い理由は無いのだ.
「だいじょぶ.私のローブはそんなに簡単に伸びたりしないから.でも,あなたは大丈夫なの?」
「気にするなって.困ってたんだろ?」
「それはそうだけど,でも,なんで?」
「別にそんな深い理由なんてないよ.別に困ってた人を助けるのに理由は要らないとも言うし.いや,そんなこと言うのは僕じゃないけど」
実際深い理由などないアランはそういうのだが,少女はどうにも納得いかないのか何か考えているようだった.
「……わかったわかった.次の退屈な授業をサボる理由が欲しかったのさ.これでいいかい?」
また適当なことを言うアラン.少女はさらに困ったような顔をしたが,ようやく諦めたようで,笑顔を見せて一言アランに向かって言った.
「ありがと」
――可愛い.アランは素直にそう思った.
_無事早瀬さんの進学記念オフの迎撃終了.オフレポを書く気はそもそもからしてないのだが,とりあえずはなにかしら書かねばなるまい.というわけで前出リンク先を読みながらなにか書くか.
_ところでこのオフ,話が出たのは土曜日あたりで,当日執行という話だったのだが残念なことに私が出られずあえなく延期.ただ,おかげで素敵な関西人さんが途中で乱入してきてくれたので,まったくもってまずい話だったわけではなく.むしろ私が土曜日無理でも,関西人さんの為に日曜日に移したりしても良かったくらいで.いずれにせよこの突発さ加減はどこをどうつついてもONE卒の文化なのだが,よくよくメンバーを見てみると全員ONE卒メンバーであることが発覚.なるほど道理.らむちゃメンバーは繊細だしね? ONE卒には話が出てから僅か二時間程度で合流したなどという突発オフの記録もあるしオフに限らず色々突発なので,突発さ加減でONE卒に勝つことはまず無理だろうが,きっと別方面でのやりすぎさ加減ならきっと負けないとの話.らむちゃにはらむちゃの文化があるのだ.きっと.
_とりあえず名駅で合流.むしろ早瀬さんが分からないのではないかと言う危険性を感じつつもういーっす.CPGは持ってきていたらしいのだけど結局警察を怖れて出していなかった模様.根性がないぞと言いたくなるも,さすがに本気で出していたら私声かけらんないのでお互い様.北口から出てくるものと信じて待っていたのになぜか南口から出てくる入江さん.なんでだ.電話がかかってきて合流.何気にメロンやメイトに向かう.なんだかみんな買い物しているので私も衝動買いしないとだめかなーなどと思ったり.真の意味での衝動買いってたぶん私できないと思うのだが,今回はかなり衝動買いっぽかったと思う.いいことじゃない気はするが.宮城とおこさんの画集二冊.画集にしては安い方かもしれないがやはり高い.が,とりあえずラーナとかこの雪にとかの絵が入ってて物凄く懐かしい.あとダイヤとジオが拡大サイズでいい感じだ.むしろちょーシリーズ揃えたい気分にもなってくる.
_あと色々ふらつく.タワーズとか行ってみるも妙に混んだ喫茶店群にうんざり.ついでに「見ろ,人がゴミのようだ!」作戦は700円の前に敗北.地下に潜るもどうしようもなく,最後はどうでもよくなって適当な喫茶店へ.でも入江さんてば私の日曜連載印刷して持ってきてるの.じっくり読みたいものはプリントアウトに限るというのは認めるけど,じっくり読まれても困るというものはやっぱりある.とりあえず飲み物は注文の品と違ったがそれはそれでよし.ガムシロップも先に入れるべきだと思ったがそれもそれでよし.ドリアを箸で食べてるところを写真に撮られてるのも,まあ,箸と手先くらいだったらよしとしよう.だがドリアは夜まで響いた.大失敗.テンション下げてごめんみんな.ちなみにこの喫茶店は周りの客ががさっと入れ替わるくらいはねばった.
_暇つぶしのゲーセン.こんなところでゲームする習慣は全くないどころか,自分の金を入れてプレイしたことすらないのだが,一人だけなにもしてないのもどうかということでぷよぷよ通やってみる.ゲーセン来てぷよぷよじゃなあとか思ったり,どのボタンがどっちまわしか分からなくて苦労したりしたが,やっぱり業務用スティックとボタンは操作しやすくて良い.もっともステージ5であっさり敗北したが.所詮そんなもんか.あとは入江さんのコインに便乗してなにやら銃を打ちったくるゲームもやってみたが意味不明.混乱のさなかゲームオーバー.とりあえず蜂が無いということで別の店をあたる.
_二件目も蜂は残念なことにみあたらなかったようだけど,二人の素敵なゲームっぷりを見て感激する.おお,カッコいいのう.そんなこんなとりあえず見ていたのだが,タイピングゲームがあるという話で誘われ,とりあえずマジにコイン投入してみる.慣れてないキーボードだったがそれなりに打ちやすかったので許すとして,最大にして最強の問題はキーボードが無理矢理置いてあって手首を浮かして打たなければならないという劣悪環境だった.手首が痛い.腕が痛い.とっても痛い.ステージ1をクリアしたところで早瀬さん乱入.時間の問題もあるし,早瀬さんもそれなりにキーボードは打てたはずと記憶していたので,ステージ2を飛ばしてステージ3を選択.もっともボスがクイズ形式でとってもいやんな感じなことに後で気づいたのだが,クイズ形式のものは早瀬さんが,そのあとのは大体私がという感じでクリア.いやあ協力プレイって素敵ねとか思っていたら,スコア表示でWinだのLoseだの表示されてびびる.勝ち負けあるのかよこれ! 勝負事も嫌いではないが,負けると嫌なのでやっぱり協力プレイの方が平和で良い.スコア的には僅差で全部勝ったのは事実だが,早瀬さん側のキーボードはどうやらUキーが効き辛いというハンデがあったようで,それを考えるともしかすると私の方が遅いくらいではなかったかな.ローマ字打ちは母音だからかなりの回数苦労したことだろう.手首を浮かして打たなければならなかったというハンデはお互い様である.ステージ5のボスで敗北.
_あとは予約していた店へ.本気で巫女装束なところがなんとも言えず根性のある店だ.ネタだとか可愛いとかどうとかよりもむしろ普通に格好いい.携帯に電波が入るのが私の携帯だけだったので,私が素敵な関西人さんのお迎えに.ただ帰ってきた時にどのようにして入ろうかとかなり迷った.私早瀬さんの本名知らないんだけど.「予約取ったのは入江さん? 早瀬さん?」「いや,早瀬さんなんですけど,彼本名で取っちゃったから」しかしそれで了解されてしまって困り気味.もしかして早瀬さんって早瀬さんで認知されてたの? なんかよく分からんがまあいいか.ところで,早瀬さんの本名はなにか楽器にでもたとえたくなるほど物凄く響きの良い名前だった.全然覚えていないのだが.とりあえず時間いっぱいまで色々ののちに撤退.私は一人栄で別れ帰宅.まあ,大体こんなもんか.
_忙しくなんぞ無いはずなのだが妙に時間が無いのは何故だ.ゲームも出来なけりゃ仕事も進まない.自分が何をやっているのかよく分からん.無駄に時間ばかり過ぎていっているような錯覚に陥る.多分今やっていることが将来何の役にもたたないなんてことはそもそもありえないだろうが,というか,少なくともそんなことはありえないと私は信じているのだが,空回りの状態っていうのはあるのかもしれない.開き直れ.締め切りは破るためにある.
_というのもどうかと思うが.まあいい.そんなわけでひとまずはEruさん復活のことおめでとうである.どんなわけかわからんな.一時閉鎖してたのですがこのたび復活だそうで,ぼちぼちとがんばって下さいまし.あとバナーありがとう.でも色々事情があってもういっぺん作ってもらうことになるかもとかナントカ.そんときはよろしく.いいのかなこんなこと言ってて.ま,バナーくらい自分で作れっていう向きもあるんですけどね.如何せんセンスが無いもんで.
_それともうひとつ.六条さんが日記っぽいネタ人生を公開中の模様.これいい具合にネタ人生なんでその手が好きな人はいい感じではないかなとか.ていうか現在のネタ人生トップ写真の立ちネコがいい味出しすぎ.ちなみに彼はCivilizationというゲームでの繋がり.毎度素敵なプレイをしてくださるので,ゲーム開催して彼が居てくれると喜んじゃったりしてます.ゲーム中で敵対することもあるかもしれませんが今後ともよろしく.ていうか,彼多分ここ知りませんね.ま,いっか.とりあえず紹介までに.
_残り数時間では無理だ.そう思ってしまうのがいけないのかもしれない.一度戻らずに突き進んでしまえばなんとか間に合ったかもしれないのに.そうやって戻ってしまうから無駄な時間を過ごしていると錯覚しがちなのだ.ただ,それでも,間に合わせで終わらせてしまいたくはない.もし間に合わせにするのなら,とことんまでに単純な思いつきでやった方が後のためによい.他にやらねばならぬこともある.なら,いいのだ.多分何も代わりはしないのだろうが.ただ何よりもバナーを屠ってしまいかねないのが最大の難点だ.せっかく作ってくれたEruさんになんと申し開きをすれば?
_どこまでも弱い自分が悲しい.
銀機構は虚空に浮かぶ少女の姿をしている.
少女は真っ白で長い髪を持ち,
少女は真っ白で美しい肌を持ち,
そして胸元には白い球体を抱えていて,
ただ左目のみに残された瞳は赤黒かった.
白き球体は銀の機構による世界である.
白銀の輝きを持ち,白銀の物語を紡ぐ.
それらを読み解ける者は,まだいない.
瞳の色は彼女の体液の色である.
しかし赤の機構がそれを許さず,
彼女の右目を抉り取ってしまった.
だから彼女の両の瞼は閉じている.
片方は赤機構から守らんがため.
もう片方は痛みに耐えんがため.
彼女が虚空に浮かぶはその長き銀髪が故.
異邦人よ.銀機構は,即ち白の少女は,
おそらくあなたも歓迎するだろう.
だがひとつお願いがある.
どうか,彼女を大切にしてやって欲しい.
彼女にはもう,片方しか瞳が残されていないのだ.
_風邪引きです.アレですか.名古屋近辺で流行中のインフルエンザ.いや良くわかんないんですけどもね.そんなわけで今日は素直に倒れていたのであります.今日はというか昨日あたりから.しかしなんかげんなりです.げんなり.なんでまわりはシチュー食ってるのに私だけうどんですか.うどんですよ.しかもちょっと塩辛くて伸びちゃってんの.いや伸びちゃってんのは私のせいなんですけどね.冷めるまで待つか作戦に敗北しただけの話で.そんなわけでまた素直に倒れます.そいでは.ぱたん.
魔法学校の図書館というのは,いささか危険な場所だった.図書館には,本を閲覧しやすくするためと本を汚さないために,少し魔法で働きかけることにより本を浮かして自分のところまで持ってこられるような巧妙な魔法が仕掛けられているのだが,要するにそれが故に利用客が多いと本が頭上を飛び交うことになるのである.もっともここは二階なので五級以上の魔法使いしか上がってこられないわけだから,本如きでどうにかなるような一般人は居ないはずだが,逆に五級でも上がってこられることが危険度を上げる原因にもなっているとも言えた.
「こらっ.もう少し本は丁寧に扱えよ」
アランは呆れた調子でそう言うと,落ちそうになる本を杖を軽く振って拾い上げ,本来いくはずだった方向へ持っていってやる.要するに扱い方が下手な者も中にはいて,突然頭の上の本が落ちてくるなんぞということもあるわけである.
「面白い仕掛けね.家にも張ってみようかしら?」
後ろでは笑いながらそんな仕掛けをやすやすと使っている少女が居た.彼女が扱う魔法は本棚の本を連続して調べて行き,少しでも気になる内容があるとその本はひとりでに本棚を飛び出て少女の元へやってきた.そして少女の前で開くとまるでそこだけに風が吹いたかのようにページがぱらぱらとめくれていく.
「あー.でもちょっと大掛かりな魔法だからね.少人数で使うには利便性よりも維持の方が大変であんまり意味ないかもね……ととっ.もう少し練習してから遠いところの本取れってんだまったく」
アランの方といえばどうにも飛び方が不安定な本の軌道を修正したり,突然誰かさんの頭の上に落ちそうになる本を拾い上げたり,床に激突しそうになる本を助けたりと色々忙しいようだった.
「そなの」
本を探しながらで話を聞いているのかいないのか,少女は生返事を返す.
「僕は維持が必要な魔法は魔方陣に頼るのが一番だと思うね.宝石なんかに頼ってるからすぐ劣化するんだ.……今度の研究課題は図書閲覧魔法の魔方陣化にでもするか.床いっぱいに魔方陣描いてさ.ところで,……えーっと」
後ろにいるはずの少女に声をかけようとして,そういえば名前を知らないことに気づいた.
彼は本を拾うのを止め,少女の方に向き直った.少女の方はそれに気づいたのか,ぱらぱらめくっていた本をぱたんと閉じると,その本を元の場所に返した.少女は微妙にずれていた体の向きをアランのほうに向け,本は一度人の背の高さではぶつからない程度まで上昇し,後は本棚の間を縫うようにして目的地まで飛んでいった.
アランは少女の方に向き直ったはいいが,よく考えたら自分は他人に名前をきいたためしがあっただろうかと思った.大抵相手から名乗ってきた気がする.どう聞いていいのか情けなくもわからなくなって混乱し,結局,次に彼の口から出てきたのはこんな言葉だった.
「あー.えっと.僕はアラン」
最後に,君は? と一言付けるだけで十分名前を尋ねているように聞こえたものを,何故か彼の口からはそれが出てこなかった.おそらく彼は誰かが名乗ったら反射的に自分も名乗っていたのだろう.だが当の少女の方はしれが何なのか分かっていないようで,困惑した表情を浮かべて首をかしげた.と,その時――
ばこん.
……軌道修正を誤ったらしい重く分厚い本の角が思い切りアランの側頭部に直撃し,彼は――不覚にも――よろめいた.だがさらに不覚かつ不幸なことに,二人は階段を上がってきたばかりで,要するに彼はそのままだと下り階段を転げ落ちることになるわけである.
「あ,危な――」
もちろん彼は実力生なので,既に一級魔法使いでいたし,来年からはここの学校の教師に仲間入りする予定であり,要するに,そう簡単に階段を転げ落ちるような人ではない.自分でなんとかしようと杖から魔力を解放しようとした.
「――い」
が,それよりも早く少女の手が伸びてアランの腕を捕まえたため,危うく落ちるところだったアランは少女の細い腕が支えることになった.少々予定は狂ったものの,アランは慌てて体勢を立て直して,元の位置に収まった.
「あ,ありがとう……」
アランがそういい終えるか終えないかくらいのうちに,どうやらその問題の重く分厚い本の軌道修正を誤ったらしい生徒が駆け寄ってきて,二人の抱えている杖が遥か上級の一級であることを確認すると勢いよく頭を下げた.
「ごごご,ごめんなさいっ!」
「あ,ああ.いや,大丈夫.もう少し練習するように……あと図書館では静かに……」
だがアランは上の空で間抜けな返事をしていた.彼は――不覚にも!――まだ彼の腕を握っている,少女の少しひんやりしていて柔らかい手の感触が思いのほか気持ちいいことにどぎまぎしていたのである.
問題の生徒は理由はともあれこっぴどく叱られなかった事を幸運に思ったのか,もう一度頭を下げ,床に落ちた本を拾い上げるとまた走り去って行った.
「……あ,そだ.だいじょぶ?」
もっとも,少女の方はアランが上の空なのは自分の腕のせいだとはつゆ思わず,本のあたりどころが悪かったのではないかと心配して,アランが体勢を立て直したことを確認すると手を離し,慌てて本がぶつかったあたりを診に回った.
「腫れてるわね.えと,こゆときは――」
少女もアランもほぼ同じ背の高さで,アランの方が指三本分の太さくらい高いだけだったから,少女の視線はちょっと上向きがちにはなったが容易に本がぶつかったあたりを見ることが出来た.少女の指はどこまでも白かったし,アランの髪は黒かったから,少女の指はアランの髪の中でとても目立った.
アランは少女の指が気持ちいのでそれはそれでまたどぎまぎすることになるのではあるが,ともかく少女は簡単な魔法を掛けて処置を終えたらしかった.
「これでいいかしら」
「ああ,ああ.いや,大丈夫……」
とりあえず自分を落ち着けようとするアラン.
「……えと,アランさん? ところで,私に何か――」
「あ,いや.名前を聞こうと思っただけなんだ」
とりあえず,落ち着けようとした努力は,まあ,無駄ではなかったらしい.大分いつもの調子を取り戻して,アランは言った.
「あ,ごめんなさい.リーよ」
少女の方も,助けてもらったにもかかわらずずっと名乗っていなかったことに今更の様に気づいて,慌てて名乗った.
「ああ,リーさん」
「リーと呼んでくれて結構よ?」
「ああ,じゃあ,リー.とりあえずここの図書館は,階級ごとに階が分けられてるから,多分この階じゃそんな大した本は見つからないと思うんだ.一級魔法使いなら最上階まで見られる.いくかい?」
「いいの?」
アランはそれに,もちろんさ,と答えて,リーを上の階に上るよう導いた.
「……それに,上の階のほうがここよりよっぽど安全だ」
ぼそっと呟きはしたものの,今回だけは悪くない事故だったかもしれない,などと思ってしまうアランだった.
_二日も三日も風邪で寝ていると,大抵何か置いていかれたような,世界が自分だけ無視して回ってしまったような,そんな妙な気分になるものだ.もっとも,今回はそうでもなかったかもしれない.とりあえずのところ元気にはなった.度々IRCのログと日記周りだけは覗いてたものな.自分の生活はそれで回っていくのか.今までもずっとそうやって回っていたのか.最低限度ラインを少し下回る程度の確認で過ごした数日,悪いばかりではなかったが,風邪で寝ていただけだ,良いはずもない.
_そんななかほしのこえを見に行っている人とかいてとても悔しい.私も見たかったのに.別に風邪でなかったからといって見に行けたわけでもないのだが.そういえば彼女と彼女の猫は少し苦労して買った.個人で作ったとは思えないほどの出来だが,個人だからこそ出来た作品なのかもしれないとも思う.この作品実は白黒なのだが,少しも白黒を感じさせない.白黒なのに不思議と色が伝わってくる.後になってプロットを読んで白黒であることに気づいたくらいだ.製作者本人の字コンテには「あのムービーより全然すごくはないけどこっちの方が好き」と言ってもらえるもの
を作りたいと書いてあるのだが,まさにそれをやってのけた感がある.BSFのデモムービーもこの人の作品で,そもそも知ったのはBSFのデモだった.私は大好きだ.だから,ほしのこえ,見なければなるまい.DVDが発売されるならなんとしてでも買おう.
_出来る人は出来るのだ.それを本気で気にかけて本気でやれる.本気で取り組めるから本物が出来上がってくるのだ.向上心を持ち,どこが悪いのかを考えて,どうやって良くしていくのか考えられるのだ.どうして自分にそれが出来ないのか,一度考え直した方がいいかもしれない.それさえ出来れば,きっと何か出来る.少しは自分を信じてみればいいのに.
_バナーは懸案事項だったのですが,無効化した翌日には新しいものを送ってきてくれたEruさんに大感謝.色合いは私も難しいと思うのです.見ての通り良くなったのやら悪くなったのやら全然分からない配色ですしね.本人は妙に拘って選んだ色なのですけど,ぱっと見あまり良くない気はします.CSSは色変更に便利かと思いきや,中途半端に変なCSSを使っているので中途半端に便利で中途半端に不便でした.まとめてtableを廃止すべきな気もするのですが,CSSの実装具合や,それになにより自分自身がCSSのことをちゃんと分かっているのかどうか怪しげだという部分がやはり問題なのです.
_バナーは素敵なものをどうもありがとうです.とりあえずのところ差し替えておきました.多分直リンクで張ってくださっているところは自動的に差し換わっていることでしょう.それはそれで便利なんですね直リンク.多分直リンクで張ってくれてるのは同じサーバー内部だけだから持ち帰りでも負担は変わらないし.
_銀機構はこれから何をするのでしょうね.所詮中身は何も変わっちゃいません.ただそれでも,名前はどうにかしたかった.それが出来ただけでも今のところは満足です.
_色々考えるだけは考えるのだが,それが自分に出来るのかどうかということを先走って考えてしまうのはよくないのかもしれない.もっとも,先走ってあれもやろうこれもやろうでは破綻するのは目に見えているのだが.いや,当面どちらも同時に行っている状況をなんとかしないといけないのだろう.
_一年前の分から先の自分の日記をずっと読んでいた.当時は妙に語り口調だったようだ.それにしても意外と読めてしまうのはどうか.まあ確かに読めない文も多々あるけど.ただどちらかというとあれは自分しか読めないの間違いではないのかなとか思ったりしなくも無い.今でも大差は無いのだろう.当時自分がどういう状況だったのかある程度分かるからこそ文意が分かるのであって,そうでなければ全然分からないだろうなというあたりが,こう,公開する意味を考えていないというか.でも反省する気がなさそうなところがダメダメである.分からないところを飛ばして読んでくれているのなら殆ど飛ばされているんじゃなかろうか.カウンタだけ回る事実.寂しいもんだ.
_ところで,一年前の日記を読み始めた理由は去年駄菓子屋の陰謀のことを日記に書いたかなと思ったからなのだが,どうやらOSの再インストールで忙しかったようだ.どちらかというと駄菓子屋の陰謀の話について書かなくても良かったんで幸運だったと当時は思っていたに違いない.
_で,駄菓子屋の陰謀.何故か今日は妹君が大量のチョコレートを抱えて帰ってきた.何やってんだオマエ.当然それらは男からのものであるはずも無く,どうやら全て女同士で交換したものらしい.男どもに配っても見返りが期待できず損するだけなら,女同士で交換していろんなチョコが食える方が得なのは,そりゃ確かに違いない.まあ,所詮彼女達にとってはチョコ交換イベントでしかないのだろう.
_え,私ですか? 私は毎年恒例で母親と妹君達から義理でそれぞれ頂きました.家族愛として考えるなら本命なのやも分かりませんが,いずれにせよイベントの趣旨とは違うような.まあ,私チョコは好きなんで,頂いたチョコは美味しく食べさせてもらうことにします.ありがと.
_ローカルでの編集はレスポンスが良くて快適だなあ.それはともあれ何気に自作の圧縮解凍ソフトを久々に弄っていた.もっとも圧縮解凍ったって実際柱となる部分はDLLを呼び出してるだけなんだけど.とりあえずLHAとZIPとCABの三つに対応していたのだけど,今回は新しいライブラリを落としてきて新たにTARに対応してみた.当然ながらやっぱりライブラリがないと動かないけど.
_それにしても,何年前に書いたコードだ,これ.それでもまあそれなりにマシなコードではあるようだ.コメントがまじめに書かれているところを見ると,それなりに手入れされていたのだろう.ただ,当時はどうやら関数ポインタがなんたるか良く分かっていなかったらしい.引数リストも戻り値も同じなのにわざわざ別のtypedef用意してswitchで分岐しているあたりが何のための関数ポインタで何のための共通インターフェースDLLなのだと問いたい.そんなわけで今回はちゃんと纏めてswitch文削除.すっきりした.私が度々コードに手を入れるのはこういうのが好きだったりするからなんだろうな.そんなこんなで,これからはライブラリさえ取ってきたらあとは少しばかりDLL依存のコマンドとか書くだけで追加できるようになったかなという雰囲気.どうせ私くらいしか使わないんだけどね.
_それにしてもTARが使えるようになったっていうのは非常に便利便利.最近UNIX系列のOSを使うようになってtar.gz形式のファイルを扱うようになってきたから入れてみたのだけど,これは思いのほか便利そうだ.どうやらDLLひとつでbz2とかgzipとかcompressとか全部対応してくれてるらしい.非常に嬉しいとこ.いや,そりゃコマンドライン叩けば今までだってなんとでもなってたし,実際それで十分っていう話もあるんだけどね.それでもエクスプローラ使ってる時にコンソール開くのも面倒というあたりのこと.
_私の住んでいる家には,パソコンなるものが五台ある.うち二台は編集長に売ってもらったりだとか,KISAさんに譲ってもらったりしたものである.五台もあるとはさぞかし贅沢な環境だと思われるかもしれないが実際に私が自由に使えているのはそのうち一台だけである.そうも言うと今度は家族五人いるので一人一台でそりゃ丁度だろうと思われるかもしれないが,それにしたって私が調達してきたのに私が自由に使えないって言うのは,いや,まあ,世の中そんなもんだろうけど.というか,使えないというは正確ではなくて,現実には殆ど私が使ってるって言っても問題ない程度には使ってるからそれほど文句言うほどのことでもないとは思うんだけども.
_ただ,それでも家族が一緒に使うっていうのはかなりの足かせになるのだ.自由には使えないのである.昨日言ってたtarのもそうだけど,最近Unix系列のOSを扱わなくちゃならなくなってきたので,手元に一台くらいは欲しいってことなのである.だけどそうしてしまうと家族は一切使えなくなるという弊害があるのでなかなかそういうことは出来ない.だもんで,あと二台くらいは,欲しいのだ.色々と.LinuxとかFreeBSDとかデバッグ用とか実験用とか,色々である.
_かと言って,まさか新しいマシンを買う余裕などは無い.それに最新スペックが必要なほどの用途を想定しているわけではないのだ.だとすると中古というあたりになるのだが,それにしても中間業者を通すというのはかなり割高になる.だから直接知人から安く手に入れることは出来ないだろうかと日々狙っているわけだが...
魔法使いにその杖を突きつけられること――その恐怖が分かるだろうか?
つまり,簡単に言えばそれは,手練れの剣士にその得物を首筋に突きつけられたようなものだ.相手の勝利宣言.少しでも動いたら,次の瞬間には首と胴体が離れているに違いないというそれである.
だが魔法使いのそれはさらに恐ろしい.剣士に得物を突きつけられたなら,例えばその剣士が魔法を使えないと仮定すれば,まだ自分には魔法を使って反撃できる可能性がある.だが相手が魔法使いではそれすらできない.全ての自由を奪われた状態がそこに出来上がることになる.
だから,より怖い.もっとも,自分に魔法という対抗手段がないのならどちらの恐怖も変わりはしないだろうが.でなければ,相手の魔法使いが自分より格下であるか.もっとも後者の場合はどちらも恐れる必要が無いということだが.
では,竜にその爪を突きつけられたらどうだろう.世界を見守る種族,彼らがその爪を自分に突きつけるのなら,自分は何か世界に敵対している可能性が高いだろう.もちろんそうではないかもしれないが,いずれにせよ,竜になんらかの物理攻撃が効くとはあまり思えないし,魔法にしたって,有効な魔法は禁術とされる.その禁術が使えるのなら対抗手段はあるだろうか.爪を突きつけられた状態で? そりゃ,無理だ.ということは,いずれにせよ,同じか.
ただ,相手の風貌だけに,魔法使いに杖を突きつけられるよりも恐怖を誘うかもしれない.そしてその爪が物理的に鋭利であることも.
――いや.
彼は冷静に,否定した.例えば今の自分はどうだろうと考えてみれば,恐怖とかそういう問題でも無いことに気付く.こうにもなってしまうと,出来ることの選択肢が限られすぎてむしろ落ち着いてしまった.自分が変にこういう事態に慣れてしまっているだけかもしれないが.魔道士の杖を持って来はしたが,だからといって今になって禁術を使えそうな状況でもない.もっとも,竜に爪を突きつけられているだけあって既に自分は世界に敵対しているのだから,今更禁術のひとつも使ったところで何があるということでもないのかもしれない.いずれにせよ,多分この鋭利な爪は少しの魔法の行使も許さないだろう.
「解放されるのは千年の時の経ったあとだ.世界がそれを決める.千年の時が過ぎる以外に解放される余地は何一つとしてない」
竜の発する声は妙だった.どこが妙かといえば困るが,何か不思議な違和感があった.だが意味は取れる.彼はそれに頷こうとして,やめた.竜の鋭利な爪先で喉元を傷つけてしまうのはなんとなく痛そうだったからだ.逆に鋭利過ぎてそれほど痛くないかもしれないが,こんなときにそんなことを試す気にはとうていなれなかった.
千年の時.それは一体何を意味するのだろう.世界はどうするつもりなのだろう.だが,杖を持ちながらにしてこのまま居るわけにはいかないのだと.
おそらく,自分の主観では千年など一晩程度の感覚でしかないのだろう.それでいい.別にそれでいいのだ.ここで妙なことをして爪に首を引き裂かれるよりは,多分,いいに違いない.そう,多分だ――千年も時間が経てばどうなっているかなどわかったものではないが.ただ,ひとつだけ心残りだとすれば――
――それは,娘を置いていかねばならないことだ.
――竜の爪が彼から離れると同時に,彼は透明で巨大な水晶のようなものに閉じ込められていた.そしてそのまま,静かに千年の時が過ぎるのを待つ.
_書けない時は書けない.仕方あるまい.思考が言うことを聞かないのだ.
_膝の付け根あたりを打ちつけた.打ち付けた当時は確かに痛かったがそのまま座ってしまえばなんてことはなかったので放っておいたら,立ち上がったときに妙に痛んで困った.今も動かすと少々痛い.見たところ腫れたり変色したりといったことはなさそうだから大したことではないのだろうが.
_多分,この膝の痛みは放っておけばいずれ癒えるだろう.そう,例えばナイフで指を傷つけてしまって赤い血が流れ出てしまう,そんなこともあるかもしれない.だがそれでも,いずれその傷は塞がって元の通りになっているだろう.深手であれば傷跡が残るかもしれないが,それでも,多分もとの機能は戻ってくる.よほどひどくなければだ.
_生き物にとっては当たり前の能力だ.とても素晴らしい能力だと思うが,今更改めて凄いと思う人は少ないかもしれない.だがコンピュータとはどうだ.例えば今あなたがこのサイトを読むのに使っている,電気が無いと動かない半導体とかそのほかもろもろでできた箱のことだ.それはパソコンかもしれないし,もしかしたらご苦労なことに携帯電話かもしれない.もっと別のものかもしれない.だがいずれにせよ,それらはどうだろうか? 傷が付いたら元に戻る能力を持つものは? 多分無いだろう.
_コンピュータは自己修復出来ない.そもそも自分のどこが異常でどこが正常なのか判別できない.でもソフトウェア的にならば,どうだ? 例えば,Windows2000に付いたSafe File Protectionなんぞという機能はどうだ.まるで自己修復しているように見える.Outlook Expressを不要と思って消したら,次の瞬間には復活していたという,あの機能である.その時の感想はまさに"気持ち悪い"だ.まるでコンピュータが意思を持ったかのように自分で修復した.そんなように見える.
_だが,見えるだけだろう.重要な書類ファイルを消してしまった.だが,それは戻らないのだ.なんらかの原因でメモリが破壊された.それもやはり戻らないのだ.SFPは単にMicrosoftがWindowsを実行するのに必要なファイルがなくなるのを防いでいるに過ぎず,適宜どこが異常なのか判別しているわけではない.とても残念なことに.もしそうなら,Outlook Expressは消えてもいいはずだ.
_コンピュータはそんな能力は持ち得ないのだろうか? 異常を判断できる知能が無いとダメか? だが,私の膝の細胞群に知能があるだなんてことはあまり認めたくない話だ.そうだ,知能なんて無くても修復くらい出来そうなものではないか.世界に属するハードウェアはともあれ,ソフトウェアはどうだ.自分で正しいコードを生成できないのか.隣のファイルがいつもと違うことに気づけないのか.ああ,それが無理ならばネットワーク単位ではどうだ.隣のコンピュータが反応を返さないことに気づけないのか.気づいているはずだ.だったらそれをなんとか出来ないのか.お互いに監視し合えないのか.ハードウェアの故障を自ら修復することはともかく,ソフトウェア的なことはどうにかできないのだろうか.
_夢物語,なのだろうか.どうにかできないものかとつい考えてしまう.せめて擬似的なことはできないか.人が直接手を下して判断するのではなく,せめて判断基準を用意してその基準に従って自分を書き換えていくというようなことは.隣のコンピュータのプログラムが改良された.それによってデータ転送の効率が良くなった,エラーが起こりにくくなった,ではそのお隣さんから新しくなったものを貰おう.隣のコンピュータがコンピュータウィルスにやられた.それによってデータが詰まった,反応が鈍くなった,ではお隣さんを助けてやろう.隣のコンピュータがエラーでプログラムが壊れた.だけど不思議なことに反応が良くなった.ならそれを頂こう――そんなことは?
_ああ,だが――コンピュータとは人の命令に忠実であるべきなのかもしれない.
_私は専らそれは「ぶいびー」と呼んでますが.ついでにVBAは「ぶいびーえー」.そのままで面白くないような気もしますけど.とか思ったらその前の経由地を見てなんとはなしに納得.なるほど,確かにVCは「ぶいしー」です,はい.もっともVCより先にVB触ってますが.ただ個人的にはどちらかというとVCよりQuick Basicを「きゅーびー」と呼んでいた方が強いような気もするのですがどんなもんでしょう.え,そんなマイナーな言語知らない? それなりに悪くない言語だったと思うんですけどね.VBはそもそもQBの流れのはずだし.
_今日はICOのサウンドトラックの発売日なのだが,予約していたにも関わらず手に入っていなくて少し寂しげ.なにやら予約が一杯でどうこうという電話が掛かってきたのだが,私はCDの予約システムが流通上どうなっているのか良く知らなかったので,話の内容を殆ど聞かず多少遅れるくらいは良いですよと答えて電話を切った.二度も.多分確認した事実を記録しかねたかなんかか,実は詳細を聞くと確認内容が違ったとかいう話なのかもしれないがいずれにせよ入手日が遅れるという事実は変わりなく,せいぜいそんなところだろう.予約とか無しで普通に店頭で売っているのを見かけたら,買って雪駄さんに多少嫌がらせの意味を含めつつこれまでのお礼もかねて送りつける気でいたのだが,しばらくは品薄かもしれない.というのも,どうやら影王さんも入手を試みられたにも関わらず見つからなかったらしいからだ.
_ところで,影王さんの現代の昔話は楽しく読まさせていただきました.MOON.の切り具合はなかなか良さげですがICOは多少切り残しがあるようなしなくも無いです.が,どこがどのようにと指摘できるほどに考えられないのがもどかしいところです.IRCに出てこられましたら是非謀るへ.議論の相手足り得ないかもしれませんけど.どうせ私はネタばれを語れる場所が欲しいだけだったりしますし.それにしてもONE卒にも萌え文集にもお薦めしているのに未だ誰もプレイしていないのはちょっと寂しげ.いや,プレイ途中の方もいらっしゃるようですけど.
_ただ,私が薦めるにあたって怖いのは,相手に何か感想を強要してしまうのではないかとか,先入観を与えてしまうのではないかとか,そういうあたりだったりするのです.人間薦められてプレイしたら薦めてくれた人に何か言わなくちゃいけないという気になるでしょうが,でもそうやって「何か言わなくちゃ」と思ってプレイして欲しくないな,という話なわけです.例えば,普段本を読むのは嫌いではないのに,学校の課題で読書感想文を書けと言われて読んだ本はつまらなかったりとかするでしょう.そういうのを避けたいのですが,もう遅い気もしますね.その上,今回のICOの場合はICOだけでなくPS2も買わなくてはならない方が多いようで,そうなるとPS2本体の値段が馬鹿にならないという事実もありますし.
_そんなこんなですのであまり強く薦めるのは怖いのですが,それでも薦めちゃいます.見かけたら是非買ってください.PS2本体は持って無くても良いから.生産数が少ないとかいう噂を聞かなくも無いので,確保だけでも.ほら,誰かからPS2本体借りてプレイするとか,本体値下げするまで待つとか色々.ダメですか? ダメですか.あらら.
_ちょっと調べたいことがあったのでGoogleでちょいちょいと検索語を指定して検索したら,一番上に自分の過去日記が出てくる罠.いや,何でよ.自分の過去日記に有用な情報が載っているようならいちいちGoogleに頼りませんて.しかも鬱吐き文が側に.さらに嫌.その上自分の検索語の指定の仕方が悪げなことを突きつけられた感じでもっと嫌.特にロボット除けを施していないのがいかんですか.robots.txtくらい書くですかね.とか言いながら多分やらないんだろうな.
_ところでこの日記は妙に一日ずつ遅れていたかのように見えたかもしれないが,不可抗力である.というか,まあ,そもそも見られない状態が続いているようなのでどうでもいいことのような気もする.要するにサーバーに繋がらないのである.完璧に.別にサーバーがダウンしているわけではないのだが,どうもハウジング先にトラブルがあったようだ.何が起こっているのか良く分からないので何ともいえないのだが,それにしても使えないと不便である.というかメールすら通らない.連絡手段が無い.なかなか根性のある状況じゃないか.ICQとか通しておくべきだった気もする.今更遅い.携帯のメールとかいう手段も無いわけではないが,まあ,ともあれ早めに復旧してくれることを祈ろう.いや,なんていうかこの文が公になるということは一時的もしくは部分的であれ復旧したという意味になりそうなものだが.
_とか思ったら繋がった.今のうちにアップロードしておけば日付挽回できるに違いない.また落ちてもいいようにさっさと上げておこう.
_うん.非常に良い.羨ましい.私も時々そんな風に書いてみたいと思う.そんな風に人を書いてみたいと思うのだ.思うのだけど.そうだ,私がつい保存してしまったのは,もしかして初めてのやつだったのだろうか.当時から素敵だと思っていたが,いや,実際腕を上げたと思う.まだ半年とちょっとだろうに,そんな風に伝えられることに驚く.もうみんなが知っている.とても強くて,優しいこと.
_あなたも不思議な人だ.らむださん.まるで魔法のように周囲を良い方へ変えてしまう.いや,表現が悪いことを承知の上で言えば,そう,全て良い方へ捻じ曲げてしまう.何故.どうしてそんなことが出来るのか.不思議なことを行うことを魔法というなれば,まったく魔法ではないか.こんな人が世界には居るのだと驚き,そして自分がそんな人と知り合ったことをさらに驚く.断っておくが言っているのは柚子葉嬢の件だけのことではない.そう,きっとみんな分かっている.とても世界を幸せにしていること.
リーはスタンリーを椅子に座らせ,自分も座った.寝床の用意とやらは出来たのか,アランも奥の部屋から戻ってきて座ろうとする.
「あら,今日に限って夕食は作ってくれないの?」
「ええっ.お客様来てるのに僕なの.勘弁してくれよ」
驚きつつ抗議の声を上げるアラン.
「いいじゃない.客観的な評価が聞けそうよ」
「そ,それはそうかもしれないけど」
「お願いね」
リーが笑って手を振ると,アランは諦めて台所に向かった.台所といったところで別に仕切られた部屋があるというわけでもないが.
「いつも彼が作っているのか?」
「そうね.どちらかというと作らせてもらえないが正しいけど」
「作らせてもらえない?」
「なんかね,私より上手に料理が出来るまで練習したいんですって」
「そうだよ! 僕の料理はリーを越えるまでお客に出すつもりは無かったのに」
台所から声が飛んできた.
「あら,越える越えないも無いわよ.私はアランの料理大好きよ?」
「い,いや.そういってくれるのは嬉しいんだけどね」
「まあ,いずれにせよ彼の料理は美味しいから期待してて良いわよ,スタンリー」
「僕はリーの料理を食べさせてあげたかったよ!」
なんだか良く分からないが,とりあえずのところ二人とも料理は上手いらしい.
「別に,俺は自分で持ってきた保存食で十分なのだが」
「そんなこと言わないで.アランの料理食べてみてよ.美味しいことは私が保証するわ」
「ま,まあ,それはもちろん頂くことにするが……」
なんていうか,こんな予定ではなかった.何か悪いような気がしてならないのだが,そんなスタンリーを見越してかリーが先回りをして言ってきた.
「あ,そうそう.だからって代金払うとか言わないでね.こっちが情けなくなっちゃう」
「そ,そうか……」
ならば遠慮なく全部頂いておこうと腹をくくるスタンリーだった.
「それにしても,なんでここへ?」
「いや,仕事でこちらへ来ただけだ.確かエドの家がこのあたりだったと思って.そういえば,エドはどうしたのだ?」
「父さんは,今はここには居ないわ」
「一体どこへ行ったのだ? 仕事か?」
リーは少し俯いて考えているようだった.何かあったのかもしれないが,スタンリーにはエドに何かあるなどという事態は少しも想像できなかった.
「……たぶん,あなたは二度と会うことは無いと思うわ」
「そ,そうか……」
やはり何かあったのか.実に考えにくいことだが,よくよく考えてみれば妙に弱々しいところがあったような気は確かにしないでもない.
「で,スタンリー,仕事って言うのは?」
「あ,ああ.運び屋兼護衛みたいなもんだ」
詳しく聞きだす前に話題を変えられてしまった.だが詳しく聞きだそうとしても無理な気はしていた.自分とエドの関係など14年ほど前に一度会っただけで,もう顔すら思い出せない程度なのだから.
「運び屋兼護衛ねえ」
「そういうお前らは何をやってるんだ?」
「魔法使いに決まってるでしょ」
聞き返すも即答されてしまう.
「い,いや.それはそうだったが」
「まあ,もう少し言えば,アランは学校の先生やってるけど」
「……学校の先生,か」
そう言われて台所の方を向くスタンリー.そこには料理をしているアランが居て,だが先生と言われて納得できるかといわれれば納得できるようで,そうでないようで,結局のところ良く分からかった.
それにしても,魔法使いとは,本当に手足のように魔法を使うのだなと彼は思った.素材を切るにしろ火を付けるにしろ魔法を使うらしい.
「魔法というのは突然使えなくなったりはしないのか」
ふと,疑問を口にしてみる.
「さあ.私は使えなくなったことはあまり無いわね」
「あまり,ということは,使えなくなったこともあるのか?」
「そうね,基本的に魔法使いは杖が無い以上魔法を行使することは出来ないわ」
「それはそうだったな」
「ま,もっとも.上級魔法使いなら,料理くらいなら予備の杖でも出来るし,その気になれば落ちてる木の棒でも,なんとかならないことは無いわ」
スタンリーはなんだか見透かされているようで怖かった.
_いろんな人を見ていろんなことをやってみようと思うがそれはどこまでも中途半端であることが問題になる.少しは何か本気になってやってみれば多少何か出来るだろうに,それが出来ないのが私の弱いところであろう.人生の殆どをはったりだけで生きてきたような気がしてならない.もっとも逆に言えばはったりこそが自分の人生で今後ともはったりだけで生きていけないわけでもない気もするが,それでいいのかというのはまた別問題だ.刹那的といわれたことがあるがまさにその通りである.今日が生きられなければ明日を生きられないのは間違いないが,だからといって明日を完全に無視するわけにはいかない.今日を生きたら明日を生きねばならんのである.夏を生きたら冬を生きねばならんのである.これはもしかしてありときりぎりすというやつか.
_いつもなんとかせねばと考えるのだがなんとかせねばと考えているだけでなんとかなるはずはないのだ.そんなこと考えるより先にもっと建設的なこと考えろ.具体的になにかやれ.やったことは無駄にならん.人生とは得てして面倒なものだ.努力なくして手に入るものが無いとは言い切れないかもしれないが,努力した方が手に入るものは大きいことは経験的に分かっていると言えよう.欲しいなら努力せよ.とにかく一見無駄に見えることでも絶対に無駄にはならん.信じろ.信じる者は救われる,とかいうのは使われる場面においてはいかにも胡散臭い言葉ではあるがその言葉自身に偽りは無い.信じる心というのは何よりも強い力を示すのである.
_なんとはなしに,それはいつごろから? などと意地悪く聞いてみたくもなるけど,いや,なんていうか.平均的に気力減衰気味というか,自分の弱さにはいつでも落ち込んでる気もするけど.ここ最近っていうよりむしろ年単位のレベルなんじゃないかなとか,でなければあまりにも刹那的.それにしたって悪循環回すのはよくない気がするね.落ち込んで失敗重ねてさらに落ち込んで.もう少し前向きに考えりゃいいものをとは思うけど.同じ失敗を繰り返すだけ.人として最悪.
_...素直に心配してくれてありがとって言やいいものを何意味不明なことごたごた言ってんだか.ごめん.そしてありがと.
_ようやっとICOのサウンドトラック入手.You were thereとCastle in the Mistは名曲.いや,名曲.CMとかでも聞けるけどとにかく.でも,実際他の曲はどうよっていうと,名曲揃いは確かだけどゲームやってないといまいち意味が乗らない気もしないでもない.例えばShadowは? でも,BGMとしてはあまりにも正しすぎるくらい正しい出来.これほどまでにBGMなものがあったかというくらいに.ていうか,16トラックあるんだけど,はっきり言ってそんなに曲あったっけ,という具合は間違いない.なんでって,そりゃそもそもICOは環境音があまりにも素敵過ぎるBGMを担当してるから.しかし聞いてみれば確かに鳴っていたことが確認できる.良い曲ばかりだ.ともあれICOは曲買い風味な気もしていたが,きっかけ的な意味では正しかっただろう.でもそれだけで終わらせなかった作品だったろうと思う.少なくとも私にとっては.いや何が言いたいんだオマエ.ていうか,PS2本体が高くてICOはなあ,とか言うならせめてサウンドトラックでも買おうよ.
_Rez.むずい.PS2は別にICO専用でも良かったんだが,まあせっかくPS2買ったんだしってことでちょっと前に買った.のだが,それにしても難しいなこれ.ちまちまプレイしていたが最近になってようやくarea5をクリアした.何がむずいってどれが目標でどれが敵の弾でどれが単なる背景なのか良く分からんのだ.やたら高速に動いてちかちかするし.もしかしたら,液晶でやってるから反応速度的に液晶が追いついていないのかもしれず,そうだとしたらそれも原因のうちか.液晶を買うときにはちゃんと30fpsは出せる実力の奴をと思って買ったが,さすがに60fpsは出せない.PS2が60fpsで作画しているのかどうかは知らないけど.いずれにせよ,私はシューティングゲームは嫌いではないが下手なので,どうにもこうにもといった感じである.好き嫌いを語ってしまえばICOの方が圧倒的に好き.
_area1のスコアアタックは今のとこ19万ちょっと.Web見て回ると25万あたりはそれなりに出している人がいる模様.19万出した時はボス前で15万届いていなかったので,これなら20万はもう少し頑張ればいけるかなと思ったのだが,全然行けない.18万前後をふらふら.何故に.ボス前15万は届くようになったのに,何故かボスで稼げないのである.うみみ.おかしい.Coreを狙わないようにしてShellとSecurityをmaxで破壊するような感じで頑張ってはいるのだが,19万稼いだ時に比べて圧倒的に弱いのだ.ボスが.Shellを削ってるだけでがんがんゲージが減っていく.おかしいおかしいと思ってランキングを見てみると,どうもShot Downのパーセンテージが落ちている.ロックオンmaxを狙うようになってから画面外に逃がす敵が多くなったのかもしれない.ともあれ,こりゃやっぱしShot Downのパーセンテージによってボスの強さが違うに違いないという結論に達する.で,先ほどWeb回っていたら,あったあった.どうやらMega,Giga,Teraとボスの強さは変わるらしい.しかも倒した時の点が違うとのこと.そしてShot Downのパーセンテージによってどの強さになるのかが決まりそう,というところまで情報入手.具体的な数値は分からんが,ともあれ敵を落とせばいいってことらしい.
_てことは,ぎりぎりまでひきつけてmax狙っても,レーザーが届くまでの間に射程外になってしまってはいかんということになる.いや,掛け率は明らかに入っているので,レーザー打ってしまえばカウントされているのかもわからんが,結果のShot Downのパーセンテージの落ち具合を考えると多分レーザーが届く前に射程外ではカウントされていない.するとボスで詰めるためにいはある程度狙いすぎはいかんということか.あと,途中のミサイル群を全部打ち落とすのははっきり言ってかなり辛い.オーバードライブ使うしかないのか.掛け率は入らないが,Shot Downを上げてボスで詰める作戦は悪くないに違いない.
_まあ,なんだかんだ言って楽しんではいる模様.
_Rez追伸.area1で20万達成,204,460.やはりボスの強さはShot Downによるようだ.90%以上でGigaだろうと思う.噂によると98%以上でTeraらしい.そんなに取れない.Teraでやれば耐久力も上がりSecurity Ringも二本になって稼ぎやすくなるはずだが,逆に言えばmax狙う余裕も無くなる.私にはちと先の話だ.